【遠野物語】さっき、不如帰(ホトトギス)が啼いたので。【角田晶生】
- 2018.05.17 Thursday
- 22:21
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(角田晶生 つのだあきお・フリーライター)
夜中にいきなり、山の中から鳥の声。
テッペンカケタカ、ホトトギス。
初夏を象徴する鳥の1羽ですが、柳田國男『遠野物語』に、こんな逸話があります。
昔むかし、カッコウとホトトギスは、仲の良い、人間の姉妹でした。
姉妹の家は貧しく、おやつにはいつも焼いた馬鈴薯(ジャガイモ)でしたが、姉は皮を食べ、妹にはホクホクの中身をあげていました。
ある時、妹に魔が差して「お姉ちゃんばかり、いつも美味しいところ食べてずるい!」と、姉を包丁で刺し殺してしましました。
すると、姉の死体は1羽の鳥となって
「ガンコ、ガンコ」
と啼きながら、飛び去ってしまいました。
ガンコ、とは遠野の方言で「固い(もの)」との意で、姉はいつも「焼け焦げて固く、あまり美味しくない皮を食べていた」事を、鳥となって告げたのでした。
それを聞いて、自分のしでかした事を後悔した妹は涙にくれて、
「包丁かけたか(姉を包丁にかけて、殺してしまった)」
と泣いている内に1羽の鳥となり、姉を追って飛び去ったそうです。
以来、遠野ではホトトギスを「包丁鳥」とか「包丁かけ」と呼び、カッコウのいる山には、必ずホトトギスもいるのだとか。
そんなお話しでした。
以来、夜中にホトトギスの声を聞くと、そんな事を思い出します。
きちんと謝って、仲直り出来るといいですね。
「ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
ただ有明の 月ぞ残れる」 後徳大寺左大臣
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